日本の酒造り、そして日本酒に光を当てる、ジャパニーズウイスキー

栃木県がまだ、宇都宮県と合併する150年前。前年の151年前に、西堀酒造が誕生しました。
酒蔵の4つの建物が有形文化財となっている西堀酒造では、現在日本酒・焼酎 ・リキュール・スピリッツ・ウイスキーといった5種類のお酒作りに励んでいます。
この記事では、栃木県で初めて酒蔵が手がけるウイスキーについてご紹介いたします!


INDEX

  1.  西堀酒造がウイスキー造りを始めたワケ
  2. 栃木県初のウイスキー蒸溜所
  3. 日本酒の知名度を上げるウイスキーのこだわり
  4. 製造工程
  5. 日本でしか造れない独自性を込めて、日本から世界へ。


1. 西堀酒造がウイスキー造りを始めたワケ



長期的な目的としては、国酒である日本酒をウイスキーを通じて知って欲しい、そんな想いがあります。
一般的なウイスキー造りで使用する穀類の代わりに米粉を使用し、酵母には日本酒酵母を使用する、日本の酒造りらしさを込めたウイスキー造り。

私たちの本業は、お酒を造ることです。
ウイスキーや蒸留酒の世界から日本の酒をより多くの人に知ってほしい。そしてジャパニーズ・ウイスキーという日本独自のクラフト性に感じた無限の可能性。そこから、私たちの新たな挑戦が始まりました。



2. 栃木県初のウイスキー蒸溜所



栃木県初となるウイスキー蒸留所『日光街道小山蒸溜所』。
冒頭にも記載した通り、わたしたち西堀酒造の酒蔵の4つの建物が有形文化財として登録されております。文化的価値を有した建物も多い酒蔵を存続させるためには、伝統を受け継ぎながらも、時代に即した新しい酒造りのスタイルを考えていかなければなりません。
そこで、たどり着いた一つの結論が、“日本酒蔵によるウイスキー造り”です。
通常日本酒は寒造りが主流で、10月から3月頃までの寒い時期しか造れません。そのため、冬の繁忙期と夏の閑散期のギャップは大きな課題でもありました。ならば寒造りの日本酒と呼応した、夏場の酒造り、二毛作としての酒造りはできないか。この環境条件から選択肢として考えられたのが、夏場でも製造可能な蒸留酒です。
2022年に、従来精米所として使用していた酒蔵を改装して『日光街道小山蒸溜所』を作りました。



3. 日本酒の知名度を上げるウイスキーのこだわり



ウイスキーは、大きく2種類があります。

①モルトウイスキー:大麦麦芽のみを使用したウイスキー
②グレーンウイスキー:とうもろこし、ライ麦、小麦などの穀類を主原料とし、そこに大麦麦芽を糖化酵素として加え製造されたウイスキー

『日光街道小山蒸溜所』では2022年7月、第1弾の取り組みとしてモルトとグレーンの製造を始めました。どちらも、どこかしら日本の酒造りらしさを取り入れております。それは、大きく3つ。

1. グレーンとして、酒米を磨く際に出る米粉を使用しました。

酒米由来の上質な米粉(吟醸粉)を使用しています。これにより、米由来の甘みとモルトの香味が調和した、日本の酒蔵ならではのグレーンウイスキーを生み出していきます。

2. 発酵には清酒酵母を使用。

国産ウイスキーは輸入の酵母に頼ることが多いようですが、日本酒メーカーとして独自性を出すため、普段使っている清酒酵母を選びました。酵母は特に香りを決定づける重要な微生物であり、その重要性を知る日本酒蔵だからこそ、清酒酵母の多様な性質を活かすことに徹底的にこだわりたいと思います。

3. 国産蒸留器の“減圧蒸留”でやわらかなウイスキーに

 

蒸留器は内部に銅板を貼って改造した国産ステンレス製蒸留器を採用しています。従来の銅製スチルの効果(※)を達成しつつ、常圧蒸留だけでなく「減圧蒸留」も組み合わせることにこだわりました。
(※銅には硫黄化合物を吸収する能力があり、蒸溜中に様々な化合物が接することにより、エステル(フルーティな香り)が生まれます)
目指すのは、“口当たりがやわらかく繊細な香味を持つ、デザートのようなウイスキー”。



4. 製造工程



工程①仕込み(糖化)

マッシュタン(糖化タンク)と呼ばれるタンクで、麦芽を糖化していきます。また、米粉も加えたりして、約63°の温水を入れてかき混ぜ糖化液を造っていきます。



工程②フィルターで濾す

フィルターで、麦芽カスと麦汁に分けていきます。



工程③タンクで発酵

分けた麦汁を、日本酒のタンクで温度管理しながら、1週間弱かけて発酵させていきます。



工程④蒸留を行う

元々の液体は7-8%。1回蒸留すると約24%。その後、再留すなわち2回目の蒸留を行います。



工程⑤⑤蒸留したものを(一部抜粋し)樽詰め

ヘッド→ハート→テールといった、出てくる順番にわけてカットし、ハート(間のいいところ)だけをとって樽詰めしていきます。



上記が、ウイスキーの大まかな製造工程となります。ちなみに、ウイスキーの茶色っぽい色は何の色だと思いますか?実は、あの茶色は樽の色!出来立てのウイスキーは、日本酒のような透明液体なんです。
この樽に詰める前(熟成前)の、出来たての原酒が"ニューポット"と呼ばれますアルコール度数は60°。飲み口は、ウイスキーのグッとくる感じはありながら、甘くてフルーティーな味。これは、日本酒酵母を使用しているならではの味です。
2023年7月に、当蔵で限定販売の日光街道小山蒸溜所 MALT NEWPOT2023は、完売御礼となりました!他、県内外の取扱店様で販売中となりますので、ぜひ見かけた際はお試しください。



5. 日本でしか造れない独自性を込めて、日本から世界へ。



酒蔵が日本酒造りのオフシーズンを活用し、ジャパニーズ・ウイスキーを醸す。これは、どんなに面白い世界になるだろう。


世界規模で見れば、ジャパニーズ・ウイスキーはまだまだごく僅かな量です。現在の日本のウイスキー蒸溜所の生産量を全て足し合わせても、それと同等の規模の蒸溜所がスコットランドには50箇所以上あるとも言われています。

いま、世界中から真のジャパニーズ・ウイスキーが求められています。同時に、日本酒の輸出額は年々最高記録を更新し続けています。まだまだ可能性が広がっているのです。日本でしか造れない独自性を込めて、世界酒のウイスキーに挑戦していきたい!

日本固有の酒造技術が詰まったジャパニーズ・ウイスキーを通じて、世界中に日本の酒造りの繊細さ、奥深さを伝えていきたいと思っています。