燗酒/温度帯のおすすめ。日本酒を温めて飲む
肌寒さを感じる日は、温かいものでほっと一息つきたくなりますね。あつあつのお料理を口に運びながら燗酒を楽しむと、体の芯から温まっていきます。
秋の長雨で気温が上がらない時は、ぬるめの燗酒で。
冬の冷え込みが厳しくなる日は、熱燗。
少しずつ温度を変えると、趣も変わるのが日本酒です。
今回は、燗酒の温度帯や特徴についてご紹介していきたいと思います。
家飲みの機会も増えた昨今、晩酌もひと手間加えることで、ちょっと雰囲気が変わり気分転換になるかもしれません。ご自宅で晩酌される際は、色々な温度で試せるというメリットもあります。本記事が、お好みの飲み方を見つけるヒントになれば幸いです。
◆目次
- 燗酒(かんざけ)とは/温めて飲む楽しみ
- 日本酒の温度帯
- 燗酒の特徴/温めると変わる味わい
- 燗酒におすすめの日本酒
- 燗酒にしたい日本酒を選ぶ/全国燗酒コンテスト
- お燗の方法/日本酒の温め方
- 湯煎
- 電子レンジ
- おわりに
1.燗酒(かんざけ)とは/日本酒を温めて飲む楽しみ
燗酒は、「かんざけ」と読み、温めた日本酒のことを指します。日本酒を温めることを、「燗をつける」「お燗する」とも言います。
実のところ、お酒を温めて嗜む飲み方は日本に限りません。温かいお酒としては、ドイツのグリューワインや中国の紹興酒などが挙げられます。
日本酒に特有の点は、微妙な温度変化によって名称があったり、味わいの違いを楽しめたりするところです。
ビールやカクテルなど、専ら冷やして飲むことが多いお酒と比べてみると、温めて美味しいというのは、そのお酒特有の持ち味と言えそうです。
ところで、燗酒はいつ頃から嗜まれるようになったのでしょうか。
江戸時代には、庶民の間で日本酒を温める飲み方が広がっていたようです。さらに遡ると、奈良時代「万葉集」に収録された山上憶良による和歌、「貧窮問答歌」の中には、
”・・・雪降る夜はすべもなく 寒くしあれば 堅塩を 取りつづしろひ 糟湯酒(かすゆさけ)・・・”
という記述も。”糟湯酒”というのは、酒粕をお湯に溶いたもののことを指すそうです。
温めたお酒の始まりは、かなり古そうですね。
2.日本酒の温度帯
日本酒は幅広い温度帯でお楽しみいただけます。種類や商品によって、味わいの変化も様々です。
〈参考:&SAKE 二十歳からの日本酒BOOK〉
おすすめの温度帯として、冷酒、常温、燗酒といったおおまかな区分をご紹介することも多いのですが、実はこれだけ細かく分かれているのですね。
燗酒と聞くと、熱燗、ぬる燗あたりが有名でしょうか。同じお酒も少しずつ温度を変えると、違った表情を見せてくれるものです。初めに一息に温めてしまって、徐々に変わる風味を楽しむのも良いかもしれません。
よく聞く「常温」は、約20℃とお考え下さい。保管する際も、20℃より高くならないような場所が、お酒に優しい保管場所です。
燗酒の反対、冷たいお酒である「冷酒」にもいくつかの名前があります。しかし、燗酒と比較するとそこまで温度の広がりはないようです。あまり冷たくしすぎると、香りや味が飛んでしまうこともあります。
3.燗酒の特徴/温めると変わる味わい
燗酒の特徴は、常温で口に含んだときと比べて、ふくらみが増すこと、香りが広がること。
ぬるいくらいに温めると、口当たりもなめらかです。より温度を上げていくと、アルコールの感じが強くなり、引き締まって辛口感が増していきます。55℃以上の飛び切り燗や、60℃以上のアチチ燗ともなると、かなりしっかりと辛くなります。
また、温めることで華やかさは少なくなる傾向があります。
そこで日本酒の中でも、タイプによっては燗酒に向いているものと、向かないものが出てきます。純米酒、本醸造などお酒のクラス・種類を目安にするとわかりやすいかと思います。
とはいえ、同じ種類の日本酒でも商品ごと、酒蔵ごとの特色があります。
例えば、当蔵の「門外不出」は純米吟醸や純米酒の中でも、味のしっかりとした濃醇・旨口タイプのお酒に仕上げたものが多いです。これは、仕込みに使用する酒米(麹米と掛け米の2種)のうち、麹米の比率を業界平均より高くとっているためです。どちらかと言えば、お燗に合うタイプになります。
味のふくらみが増すと、どっしりした味わいが引き出され、お料理も、おでんのように濃い目の味と合わせると美味しいですね。
4.燗酒におすすめの日本酒
お燗に向くお酒のことを、「燗上がりする酒」と言います。
燗酒にして広がるふくらみを堪能するには、繊細できれいなお酒よりも、コクと旨味を含んだ濃醇な日本酒がぴったりです。
ほどよい温かさには、本醸造や純米酒がおすすめです。特に純米酒は、もともとコクと旨味の強いタイプなので、燗をすることでより味わいが引き立ちます。
また、生酛や山廃のようなお酒も、熱々にして楽しむことができます。さらに、熟成させた古酒も燗酒の魅力を知るのに一役買ってくれます。これらのお酒に関しては、含有する成分が温めることで旨味を増すことが指摘されています。
”官能テストを繰り返して燗上がりするタイプの酒を整理すると、生酛・山廃づくりの酒(灘で確立された伝統的な製法で、手間暇がかかるが肌理の細かい味わいに仕上がる)、熟成古酒(清酒を数年間貯蔵熟成させたもの)に多いことがわかりました。これらは乳酸、コハク酸、アミノ酸などを他のタイプの酒よりも多く含んでいます。いずれも温めておいしく感じる成分で、それゆえ燗にするとおいしさが増すのです。”
「酒文化研究所 NEWS LETTER 第 22 号 2014 年 9 月 25 日 」より引用。(http://www.sakebunka.co.jp/archive/letter/pdf/letter_vol22.pdf)
反対に、あまり燗酒には向かないのが大吟醸など、華やかさとフルーティーな味わいをもつタイプです。熱々に温めてしまうと、持ち前の華やかさが崩れてしまいます。
5.燗酒にしたい日本酒を選ぶ/全国燗酒コンテスト
近年、全国から日本酒を募って、燗酒におすすめのお酒を選ぶコンテストも実施されています。その名も「全国燗酒コンテスト」です。
2009年から今年までの受賞酒が、HPにて紹介されています。
今年(2021年)の受賞結果は、8月中旬頃に発表されました。当蔵の「門外不出 明治蔵貯蔵 純米吟醸 」も、おかげさまで「特殊ぬる燗部門」にて金賞をいただくことができました。
▼西堀酒造 「全国燗酒コンテスト」受賞酒▼
審査の際の温度帯等も公開されているので、気になる方は温度も合わせて楽しんでみてはいかがでしょうか。
6.お燗の方法/日本酒の温め方
1.湯煎
徳利にお酒を入れて、80℃くらいのお湯で湯煎する方法です。直接温めても良いのですが、温度が上がりすぎるとアルコールも飛んでしまうので、ゆっくり湯煎していくのがおすすめです。
ちろりに移して温めると、扱いやすいかもしれません。
温まると液量が膨張するのでお気を付けください。
2.電子レンジ
電子レンジで温める方法もあります。(電子レンジ対応の容器に移して温めてください。)容器の形によっては、温度のムラが出やすいのが難点ですが、お手軽です。
燗酒は、小さなお猪口で飲むのがおすすめ。大きい器に入れてしまうと、せっかく温めたお酒もすぐに冷えてしまいます。温かいうちに飲み切れる量を、少しずつお燗していきましょう。
7.おわりに
温めて美味しい日本酒、いかがでしょうか。
自宅でお酒を嗜むときは、自由に温度を試してみると、自分好みの飲み方が見つかるかもしれません。
現在は、様々な燗酒用の酒器をネットで見つけることもできます。ぜひ、美味しく楽しく温かい日本酒を飲んで、ほっこりしてみてください。
この記事をご覧になった方におすすめ
▼「ひやおろし クラシックタイプのセット 720ml×2」▼
〈参考書籍・サイト〉
「ゼロから分かる!図解日本酒入門」山本洋子著
「新訂 日本酒の基」日本酒サービス研究会ー酒匠研究会連合会著
「&SAKE 二十歳からの日本酒BOOK」日本酒造組合中央会著
「酒文化研究所 NEWS LETTER 第 22 号 2014 年 9 月 25 日 」酒文化研究所著(http://www.sakebunka.co.jp/archive/letter/pdf/letter_vol22.pdf)
「全国燗酒コンテスト」(http://www.kansake.jp/)