酒蔵がウォッカを造る話vol.2
西堀酒造の新たな挑戦。
「夢日光 ウォッカ NIKKO DREAM VODKA」は、「日光街道 小山蒸溜所」の新しいスピリッツ(蒸留酒)です。
コンセプトは、”酒蔵が造る国産クラフト・ウォッカ”。
さて、前回に引き続き、「夢日光」にまつわるお話を伺ったのは六代目蔵元 西堀哲也専務です。
ぜひ最後までご覧ください。
◇目次◇
1.「日光街道 小山蒸溜所」の開設から「夢日光」リリースまで
2.おわりに
1.「日光街道 小山蒸溜所」の開設から「夢日光」リリースまで
「日光街道 小山蒸溜所」が誕生したのは、2022年のことです。
蒸溜所は、当社敷地内の蔵を一部リノベーションする形で造られました。木造の外観を残しつつ、蒸留設備を導入しています。
今回は、酒類業界の流れも取り上げつつ、新たな蒸留所立ち上げに至った背景についても触れてみました。
質問者▶
2010年代半ば頃からクラフトジンのブームが日本にも到来し、国内でジン専門の蒸留所を立ち上げる動きもありました。
また近年、国産ウィスキーには熱い視線が注がれています。
ジンもウィスキーもスピリッツ(蒸留酒)に分類されるわけですが、コロナ禍の消毒用アルコール需要の高まりも後押しとなり、続々と酒造メーカーがスピリッツの取り扱いを始めたのは、記憶に新しい出来事です。
このような状況の中、 そもそも蒸溜所の開設、ウォッカ製造へ踏み切ったきっかけは何だったのでしょうか?
専務▶
いま、嗜好は多様化しています。日本国内で飲まれるお酒は、明治時代は99%が日本酒だったわけですが、現在は日本酒は6%程度。食文化や時代の流れによって「多様化」が進んでいます。
※国税庁HP「酒類課税状況表(速報・毎月更新)」より作成(https://www.nta.go.jp/taxes/sake/tokei/sokuho/01.htm)
同時に、日本酒業界は「社員造り」が主流となりつつあります。冬季だけ杜氏に来てもらって季節雇用の蔵人と半年住み込み、休み無しで酒造りをする、という昔のスタイルが、法律や時代に合わなくなってきたからです。
このような背景に加え、日本酒が造れない夏場でも製造と貯蔵が可能であること、国産ジンやウイスキーなどの需要の高まりがあること、長期的に酒造技術の幅が広がること(新たな発想や気付き、フィードバックの行き来になること)などが理由となっています。
コロナ禍という先の見えないパンデミックに見舞われたとき、改めて酒造業とはなにかを振り返ったこともきっかけの一つです。
ここで重要なのは、ただ仕様の決まった借り物を作業のように造ることはしたくないということです。酒造りに携わる者として、まずそんなことはやっていて面白くない。
清酒酵母を敢えて使ったり、減圧蒸留と常圧蒸留を組み合わせてみたり、色々手を動かしてやってみて失敗しているからこそ、気付くことが多々あります。
新たな蒸留酒造りを通して、既存の酒造りの幅は間違いなく広がると思っています。
第一弾としてリリースしたウォッカは、蒸留酒の中では最もシンプルで長期熟成の必要がないホワイトスピリッツです。
今後、ウイスキーやジンも製造していく予定ですが、まずファーストステップとして、酒蔵ならではの蒸留酒を知っていただきたいと思います。
従来、日本酒造りは気温の低い冬場のみ行われてきました。雑菌の繁殖を抑え、適切な発酵を管理するためには、寒い季節の方が好都合だったからです。
現代では、冷房設備を備えた環境で1年を通して酒造りを行うという製造形態をとることもできます。一方で、日本酒を冬季に仕込むという姿勢は変えず、夏場は他のお酒造りをする酒蔵もあります。こうした試みにより、年間を通じて様々なお酒を1つの酒蔵から提供することができるようになっています。
時代の流れを受けながらの酒造り。明治5年の創業以来、蔵元が試行錯誤を重ねてきたことなのかもしれません。
蒸留器の選定や清酒酵母を用いる造りの構想から、個性的な蒸留施設づくりとなりました。
今後、蒸溜所との相互作用でまた新しいお酒が誕生するかもしれません。
2.おわりに
今回は「日光街道 小山蒸溜所」の開設から「夢日光」製造に至る背景についてご紹介しました。
次回vol.3は、最終回となります。クラフト・ウォッカ造りとは?などなど、お話を伺っていきたいと思います。
ぜひお楽しみに!