光を使って醸す純米吟醸酒「ILLUMINA(イルミナ)緑光 GREEN LIGHT」開発者インタビューvol.2
2022年4月「ILLUMINA(イルミナ)緑光 GREEN LIGHT」が発売となりました。
これまで試みられてこなかった、日本酒造りの新たな手法によって誕生した個性派のお酒です。
酒蔵における珍しい取り組みとして、Yahooニュースなど各種メディアにも掲載いただいております。
前回に引き続き、商品開発者の6代目蔵元 西堀哲也専務にインタビューをしました。
※開発者インタビューvol.1は、以下のリンクからご覧いただけます。
光を使って醸す純米吟醸酒「ILLUMINA(イルミナ)緑光 GREEN LIGHT」開発者インタビューvol.1
vol.1では「緑光」の味わいに注目してみました。
vol.2の今回は、ILLUMINAを特徴づけているLED色光照射発酵について掘り下げます。
◇目次◇
LED色光照射発酵日本酒「ILLUMINA(イルミナ)」シリーズ
Q1.数ある色の中、今季の醸造で緑色の光を選んだのはなぜですか?
Q2.LEDの光を当てることで、従来の方法で醸したお酒とどのような違いが生まれると考えられますか?
おわりに
LED色光照射発酵日本酒「ILLUMINA(イルミナ)」シリーズ
「ILLUMINA(イルミナ)」は、LEDの光を当てながら醸した純米吟醸酒のシリーズです。
発酵中に照射した光の色ごとに味わいが分かれています。
第1弾の「青光 BLUE LIGHT」は甘口に仕上がり、続く第2弾の「赤光 RED LIGHT」は酸味のあるドライな味わいが特徴的なお酒となりました。
第3弾となる「緑光 GREEN LIGHT」は、飲みやすい中口タイプ。
加えて、当蔵特有の濃醇な味を感じさせます。
Q1.数ある色の中、今季の醸造で緑色の光を選んだのはなぜですか?
”可視光線の波長のちょうど中間に来るのが緑色(やや黄色に近い)であるからです。
可視光線の対局である赤と青は、それぞれ明確な違いがでるだろうという想定で実施しました。
ならば、その中間はどうなのだろうか?という未知領域へのテストの観点もありました。
ちなみに、色の三原色は「赤・青・黄」ですが、光の三原色は、「赤・青・緑」になります。
液晶ディスプレイなどは、「RGB(*注2)カラーモデル」で管理されていますよね。”
*注2「RGB」...赤 (Red)、緑 (Green)、青 (Blue)の頭文字。
Q2.LEDの光を当てることで、従来の方法で醸したお酒とどのような違いが生まれると考えられますか?
”音や波の振動と同じように、光が与える影響は「物理的な影響」と思われがちですが、これは微生物に影響を与える「生物学的な影響」を活用しているのがポイントです。
レタスやいちごなどの栽培方法で、LEDライトを照射させる事例を想像して頂ければ分かりやすいですが、酒造りに必須の酵母などの微生物たちは、特定の波長の光に反応して動きが変わることが先行研究では解明されています。
しかし、ただでさえ”並行複醗酵”(*注1)などの複雑な発酵プロセスを持つ日本酒醸造では、今まで実地醸造の事例がありませんでした。
たまたま、当蔵に透明タンクがあったのでそれを応用できたのですが、実際の複数回の醸造を経た今、分析値ベースでも、差異が現れているのが確かめられています。
現在は透明タンクは1基しかないため、試験醸造にも限界がありましたが、来シーズンにはもう1基追加導入の予定ですので、比較醸造が可能となる見込みです。
さらに細かなデータが取れると期待しています。”
*注1「並行複発酵」...発酵タイプの1つ。発酵を進めるには糖分が必要となるが、「並行複発酵」では、原材料(日本酒における米のデンプン)の糖化と、糖分の発酵が並行して進む。ビールのように、原材料の糖化を終えた後、発酵に進む場合は「単行複発酵」という。
おわりに
日本酒造りでは、目には見えないほど小さな生物である酵母が、要となる「発酵」を進めてくれます。
酵母にはらきかける手段として「LEDの光」を用いた今季の醸造ですが、味や香りにどのような影響が出るのか、これからもまだまだ探求の余地がありそうです。
様々な要素が複雑に絡み合うため、酒造りの過程を詳細なデータに落とし込むのには困難がついて回りますが、来季以降の醸造を通じてまた新たな知見を積み重ねていけるかもしれません。
新しい日本酒造りの試みから生まれた純米吟醸酒、ぜひお楽しみください!